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草木染めの話
 布や紙を美しく彩るために古くから用いられてきた草木染め。英語ではベジタブル・ダイイング。身の回りにある天然素材を染料にして様々な色が染められます。藍染めには防虫効果があり、柿渋染めは強度を増して水にも強くなるなど、見た目以外の効果が得られるものもあります。
  身近な天然素材を使った染色方法は世界各地で行われてきましたが、染料にする材料によっては大量に入手する事が困難で、それを使って染められた物が高値で取り引されることもあります。
 布を深紅に染めるときに使われるのは、植物ではなくコチニールと呼ばれる介殻虫。乾燥してすりつぶした物を煮出して染料にするため、すりつぶしたかすが付着していることがあります。紅花より濃い赤が染められますが、大量に採取することが難しいため、草木染めの中では高価です。
 しかし世界中にはコチニールよりももっと貴重な染料があります。天然素材で鮮やかな紫色を染める染料。それはヒメサラレイシ貝という海に住む巻き貝です。この貝が分泌する液を布に付け、太陽の光に晒すと美しい紫色に発色します。現在この貝が生息するのは中米のメキシコ付近のみと言われています。この地域の人は貝が生息する岩場に布を持って入り、貝を布に擦りつけては海に帰して保護に努めていますが、荒波が打ち付ける危険な場所のため、波にさらわれて亡くなる人もいるそうです。以前は地中海にも生息していましたが、紫を染めるための乱獲で激減し、今ではほとんど見られなくなってしまいました。近年では人工的に飼育して海に帰すということも行われ始めたようです。
 アジアの仏教国の中には、紫色の法衣を身につけているお坊さんは位の高い人。という所もあるようです。また、日本でも古くは紫色は高貴な色とされていました。紫色に染められた布がとても貴重だったからなのかもしれませんね。
このページの内容は、当店の店長が武蔵野美術大学で受けた講義や実習を元に、新たに得た情報をブレンドして作成したオリジナルです。文章等の無断転載はご遠慮ください。